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2019年06月
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商標審査段階において先取りを防ぐための実務経験

シニア商標代理人 胡 海花

1 現状の説明

ここ数年、中国では商標登録の迅速化が着々と進んでいる。商標登録のより一層の効率化を図るため、中国の商標局は商標の登録審査時間を短縮化しており、2019年の末までに、商標の登録審査時間はかつての数年から6ヶ月までに短縮されるようになる。

商標登録審査の迅速化が進む一方で、商標登録の審査猶予は極めて困難となる。たとえば、引用商標の存在により登録商標が拒絶される場合であっても、商標出願者は、3年間の不使用取消審判請求や無効審判請求といった手段で引用商標を排除し、出願商標の有効性を維持することが難しくなるだろう。

具体的に述べると、出願商標が引用商標の存在により拒絶される場合には、その引用商標に対して、不使用取消審判請求という方策を用いることが多い。その際には、労して出願した商標の有効性を維持するために、拒絶査定に対して不服を申立てることが通常である。

しかしながら、中国の商標実務において、拒絶査定の不服申立審判や不使用取消審判はいずれも短期間で済むものではなく、特に不使用取消審判の期間は6ヶ月から1年半までに及ぶこともある。くわえて、前述のように商標登録の審査時間が大幅に短縮されるとなれば、不服審判を一時的に中断してもらうことはほとんど不可能となるだろう。

そうなれば、たとえ引用商標が最終的には不使用で取消されるとしても、不使用取消審決が出る前に不服申立が終了し、本件商標の出願手続きが白紙になる可能性が高くなる。その場合には、3年間の不使用により引用商標が取消された後、再び商標権者が新たな商標出願をしなければならない。しかし、当初の出願から時間が経過したことによって事情が変化し、他人に先取りされたり、新たな引用商標が出現したりするおそれがあるため、無事登録に至るまでにより一層時間と費用が掛かるという悪循環に陥ってしまう。

2 対応策2点の提案

対応策① 十分な先行調査を行うこと

商標審査の段階において、引用商標が出てくるのは、出願前の商標先行調査を十分に行っていないからである。逆に言えば、商標出願に先立って、登録の妨げとなる他の商標が存在するかなど、登録阻却事由を先行調査により明らかにしたのであれば、上述の事態を防ぐことができる。先行調査によって他人による先願が存在するが分かる場合、自己の商標の修正や先願商標への異議申立などを早急に行うことを提案する。これにより、前述の悪循環を回避することができるうえ、コストを抑えて商標の登録査定を達成することができる。

対応策② バックアップとなる新規出願を提起すること

拒絶査定の不服申立や引用商標に対する不使用取消などを請求する際には、バックアップとなる新規出願を提起することを提案する。

ここに言うバックアップとはすなわち、拒絶査定を受けた商標の手続きが係属中であるとしても、同一の商標と区分で再び新規出願をすることである。一見として時間と費用の無駄に思われるかもしれないが、決してそうではない。

当局は、商標出願の審査時間を短縮するだけではなく、出願に掛かる官費を幾度も低減させており、現在の中国における商標の新規出願のコストは、時間的にも金銭的にも非常に低いといえるだろう。バックアップとなる新規出願をすることにより、先立つ商標出願の拒絶査定不服申立や引用商標に対する不使用取消審決の結果が出るまでの時間差をしっかりと補うことができ、結果として他人による先取りを防ぐことができる。費用対効果の面からみれば、僅かな時間と費用を追加することで目的の商標登録を無事に達成できるのであるから、極めて割に合う対応策といえるだろう。

対して、バックアップとなる新規出願を怠った場合には、他人の先取りや新たな引用商標が生じるおそれがあり、その対応のために新たな拒絶査定不服申立や不使用取消を請求する必要が生じるのであるから、かえって余計な出費が発生するだろう。最悪の場合、目的の商標を諦めざるを得なくなり、改めて新しい商標をデザインしなければならなくなるおそれもある。

ご不明な点がございましたら、お気軽にmarketing@changtsi.comまでお問い合わせください。