CHANG TSI
Insights
従来、ソフトウェア著作権の登録は基本的に方式審査であり、書類さえ揃っていれば証書を取得でき、コードがどのように作成されたのかを問われることはほとんどありませんでした。しかし2026年、状況は変わりました。
一つは、中国版権保護センターが2026年1月より「コンピュータソフトウェア著作権登録審査ガイドライン(試行)」を施行し、登録審査が方式審査から限定的な実体審査へと移行した点です。ソフトウェア名称、機能説明、ソースコード、操作文書について「機能—コード—文書」のクロスチェックが行われ、整合しない場合は補正指令または拒絶となります。あわせて、テンプレート化された申請、大量申請、AIによる異常申請に対する特別取締りも実施されています。
もう一つ、より重要なのが、2026年3月から運用が開始された新様式の登録申請書です。これに伴い、版権登録における信用制度が設けられました。申請人は「当該ソフトウェアは人が独自に開発したものであり、AIを用いてコードを作成していない」旨を誓約し、担当者の署名と身分証番号を付す必要があります。虚偽または欺瞞の事実が確認された場合には、版権登録失信リストに登載され、国家信用情報システムに連携されます。その影響は与信・融資や入札参加資格にも及び、関係部門による共同懲戒が実施されます。
すなわち、「人がアーキテクチャを設計し、AIがコードを生成する」という開発形態の下で、従来の慣行のまま「AIを使用していない」との誓約に署名すれば、虚偽申請を構成しかねません。その代償はもはや「登録の取消し」にとどまらず、信用上の制裁に及びます。「登録できるか」と「そこに賭けてよいか」は、もはや別の問題です。
まず、広く見られる誤解を解いておく必要があります。AIを用いたからといって、直ちに著作権を失うわけではありません。
2023年11月以降、北京インターネット裁判所をはじめとする各地の裁判所は、判決において比較的明確な基準を確立しています。すなわち、AIを利用して生成された成果物であっても、自然人の「創作性ある知的投入」が現れている限り、著作権法の保護を受ける著作物たり得る、というものです。最高人民検察院による2025年の理論論文も、この立場を裏付けています。その論理は明快です。AIモデル自体は法主体たり得ず「著作者」にはなれません。しかし、人がAIを道具として指示し、選択し、編集し、修正する以上、人の創作的寄与は依然として成立する——というものです。
言い換えれば、法律が問うのは「質」——人が最終的な表現に対して十分な支配と寄与を有していたか——であるのに対し、登録申請書が問うのは「是非」——AIを使ったか否か——です。前者は緩やかで、後者は厳格です。この両者のずれこそが、現在企業が最も居心地の悪さを感じている点です。実体上は保護され得るソフトウェアであっても、登録段階の二者択一的な誓約で行き詰まり得るのです。
打開の鍵は「言い回しの工夫」にはありません。人の寄与を事実として作り込み、それを証拠として固定することにあります。
当該ソフトウェア著作権がハイテク企業認定のために準備されたものである場合、リスクはさらに増幅されます。
第一に、ハイテク企業認定において、ソフトウェア著作権はそもそも「比重が限られる」のです。ハイテク企業認定では知的財産権が分類評価され、発明特許等はⅠ類、実用新案およびソフトウェア著作権等はⅡ類に区分されます。かつⅡ類の知的財産権は、申請において一度しか使用できません。「中核となる自主知的財産権」(満点30点)の評価では、数量区分において、Ⅰ類(発明特許)が1件あれば7〜8点の上位区分に達する一方、Ⅱ類(ソフトウェア著作権)のみの場合は、たとえ10件を超えても最高で5〜6点の区分にとどまります。ソフトウェア著作権をいくら積み上げても、発明特許1件には及びません。
第二に、「認定申請年に駆け込みで一括取得する」こと自体が、審査上の地雷です。知的財産権がすべて申請年に付与されたソフトウェア著作権である、知的財産権の付与時期と研究開発プロジェクトの立上げ・完了時期が整合しない——これらは繰り返し指摘されている疑義事項です。2025年以降、ハイテク企業認定の審査は明らかに厳格化しており、2026年には認定管理弁法の初の大幅改正が始動し、「駆け込み特許」「研究開発の偽装」の是正とハイテク企業の「質の向上」が重点とされています。厳格化は既定の方向です。
第三に、そして最も致命的なのが、リスクが資格そのものに波及する点です。これらのソフトウェア著作権がAIによる大量生成に依拠し、かつ登録時に虚偽の誓約に署名していた場合、事実が確認されれば登録が取り消される可能性があります。ハイテク企業の中核的な裏付け知的財産権であるソフトウェア著作権が取り消されれば、資格の成立基盤そのものが揺らぎ、ハイテク企業資格の取消しおよび既に享受した所得税優遇の追徴につながりかねません。これに信用制裁が重なれば、入札参加や資金調達にも跳ね返ります——まさに、ハイテク企業資格が本来果たすべき事業上の目的を自ら損なう結果となります。高いリスクを冒して低い配点を取りにいくのは、到底割に合いません。
「人がアーキテクチャを設計し、AIがコードを生成し、人が手直しをする」という開発形態が常態となった以上、正しい戦略は申告の言い回しを工夫することではなく、研究開発と証拠のチェーンを再構築することにあります。要点は三つです。人の主導を実質化し、保護を階層化し、申告を真正に行う。
1.人の創作的寄与を「上流と中核」に移し、全過程で記録を残す
まず自然人が詳細設計を作成します——アーキテクチャ図、モジュール分割、データ構造およびテーブル設計、中核アルゴリズムと業務ルールの選択理由、インターフェース定義。この設計文書自体が創作的表現です。AIがこれに基づいて草案を生成した後、人が実質的な修正、リファクタリング、統合、デバッグを行い、Gitのコミット履歴によって人為的な改変を固定します。要求仕様書、設計説明書、技術選定のレビュー記録、AI草案に対する修正差分(diff)、テストケース——この「寄与の記録」体系こそが、AI時代における権利確保と調査対応の鍵であり、同時にハイテク企業認定における研究開発費の集計や科学技術人員の指標をも裏付けます。
2.保護を階層化し、ソフトウェア著作権に全てを賭けない
ソフトウェア著作権が保護するのは「コードという具体的表現」であり、低コストで取得できる反面、保護範囲が狭く、ハイテク企業認定ではⅡ類にとどまります。中核技術については、次の重ね合わせが必要です。
・発明特許で「方法・アーキテクチャ」を守る——会社にとって最も価値のある「人が設計したアーキテクチャ」こそ、発明特許の出願に向けるべきものです。発明特許は文言上のコードではなく技術的思想そのものを保護するため、権利として強く、反復利用が可能で、調査にも耐えます。しかも「AIでコードを書いたか否か」という問題に左右されません(特許審査の対象は技術的思想の新規性・進歩性であり、発明者は当該思想を提示した自然人です)。
・営業秘密で「非公開の中核」を守る——中核アルゴリズム、パラメータ、エンジニアリング手法など公開に適さない部分は、秘密保持契約とアクセス制御によって守ります。これは「ソフトウェア著作権ではソースコードの一部提出が必要であり、特許は公開される」という空隙を補うものです。
・ソフトウェア著作権で「具体的なコード表現」を守る——組合せの一層と位置づけ、人の著作権が確実に成立する部分のみを登録します。
一言でいえば、発明特許が方法を、ソフトウェア著作権が表現を、営業秘密が中核を守る——この三者の組合せです。
3.対象を選び、整合性を確保し、事実どおりに署名する
AIが起案したモジュールのすべてを登録する必要はありません。人の創作的寄与が真正に存在し、記録が残っており、かつ主力製品に対応する成果を選んで登録します。提出するソースコード、機能説明、設計文書の三者が真実かつ整合していることを確保してください(これがまさに限定的実体審査のチェックポイントです)。誓約書は事実どおりに署名します——アーキテクチャ設計と実質的な書き換えを実質化して初めて、「ツールを利用した独自開発」という主張が成り立ちます。実際にAIがほぼ全自動で生成し、人は表面的な手直しをしたにすぎないモジュールについては、ソフトウェア著作権の登録は行わず、営業秘密による保護または特許の技術的思想への組み入れに切り替えるべきです。加えて、登録および納品の前には、必ずオープンソースコンプライアンスのスキャンと権利帰属の確認を実施し、AI生成コードに紛れ込み得るオープンソース断片とライセンス上のリスクを解消するとともに、職務開発または譲受により自社が真に権利を保有していることを確認してください。
4.ハイテク企業認定の観点——発明特許を優先し、ソフトウェア著作権は量より真正性を
発明特許1〜2件でⅠ類の高得点を確保し、そのうえで「実質を伴い、製品に対応する」真正なソフトウェア著作権を少数用いてⅡ類を補います。ソフトウェア著作権の権利付与時期は分散させ、各研究開発プロジェクトの立上げ・完了の時間軸と整合させることで、「すべて申請年に付与」という地雷を回避します。知的財産権はハイテク企業評価の一部を占めるにすぎず、件数合わせのために真正性を賭けるだけの価値はありません。
AIによるコード作成は不可逆の傾向であり、制度も急速に調整が進んでいます。企業が真に必要としているのは、「登録できるか否か」という単純な答えではなく、事実どおりに証書を取得でき、かつハイテク企業認定の抽出検査と将来の権利行使に耐え得る一連の戦略です。すなわち、研究開発プロセスに「人が先に設計を作成する」「全過程で記録を残す」という二つの必須工程を組み込み、中核技術は「特許+営業秘密」で押さえ、ソフトウェア著作権は人の著作権が確実に成立する部分のみを登録し、その時間軸をハイテク企業認定申請に資するよう設計することです。
人の知恵をアーキテクチャと判断に置き、AIを道具の位置に置く。そしてそのことを証拠によって明確に説明する——これはコンプライアンス上の要請であると同時に、まさにAI時代における知的財産の価値の所在でもあります。
本稿は参考情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する正式な法的意見を構成するものではありません。知的財産戦略、ソフトウェア著作権登録のコンプライアンス、発明特許と営業秘密の組合せ、ハイテク企業認定申請における知的財産の設計等について、さらなるご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。