CHANG TSI
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このほど最高人民法院は、北京英某情報科技株式会社が慧某会社らを相手に提起したコンピュータソフトウェア著作権侵害紛争の上訴審判決を言い渡し、原告の損害賠償請求額 2250 万元を全額支持する逆転判決を下しました。
本件は高額賠償が注目されるだけでなく、立証責任の配分・実質的類似性の認定・共同侵害の成立要件といった核心的論点において、指導的意義を持つ裁判ルールを確立し、中国におけるコンピュータソフトウェア著作権保護の発展方向性と司法トレンドを鮮明に映し出しています。
一審裁判所は、原告がソフトウェア開発記録・コード完成時期・内容が改変されていないことといった消極的事実を十分に立証できなかった理由から、権利基礎が不十分であると認定しました。
これに対し最高人民法院は、権利者が著作権登録証・ソースコード保管資料・販売契約書などの初步的証拠を提出している場合、「改変されていない」という消極的事実の立証責任を安易に権利者に転嫁すべきではないと明確に指摘しました。
この裁判論理は、ソフトウェア著作権者の立証負担を合理的に調整し、『著作権法』及び『コンピュータソフトウェア保護条例』が掲げるイノベーション奨励の立法趣旨に適合するものです。
同時に、実質的類似性の認定基準も精緻化が進んでいます。
本件裁判所は単純なコード比較に留まらず、データベーステーブル構造における人為的回避型改変、共通するソフト不具合、固有の標識・空関数など細部を総合的に考慮し、被疑侵害ソフトと権利ソフトの類似性が「偶然の一致をはるかに超える高度な類似性」に達すると認定しました。
この多次元・体系的な比較手法は、技術事実が複雑で侵害手法が隠蔽化したソフトウェア侵害案例に対し、実務運用可能な裁判モデルを提示しています。
本件は知的財産権司法保護における「保護強化」の方向性を強く表しています。
賠償金額について、最高人民法院は侵害規模・業界利益率・宣伝資料の市場データなど各要素を総合考量し、2250 万元の賠償請求を全額支持し、厳格な保護と侵害抑止を徹底する司法姿勢を示しました。
責任主体の認定においては、複雑な会社組織と契約スキームを実質的に透視し、退職役員の技術接触履歴・関連会社間の業務連携・著作権登録資料の不自然な類似性などを総合判断し、複数の被告による共同侵害の成立を認め連帯責任を負わせました。
これは司法実務において、「技術窃取→会社による事業転換→市場運用」に至る全連鎖的侵害行為に対する規制を強化し、新規法人設立や契約分割による法的責任の回避を封じる傾向を明らかにしています。
コンピュータソフトウェア侵害案例の審理難点は、技術事実の解明にあります。
本件では、当事者がソースコードを提出できない状況においても、目標プログラムの逆コンパイル比較・データベース構造分析・ソフト不具合の対比など多様な手法を活用し、証拠ルールを適用して完全な事実認定の連鎖を構築しました。
また裁判所は、一方的に委託された司法鑑定意見を厳格に審査し、「選択的比較」といった証拠力の瑕疵を指摘し、技術事実認定における司法の主導的地位を堅持しました。
これは中国の知的財産権裁判が、技術調査官制度や証拠ルールの運用において既に成熟した実務経験を蓄積していることを示しています。
デジタル経済の発展が深化するにつれ、ソフトウェアは核心的生産要素として、その保護水準がイノベーションの原動力と産業安全に直結します。
本件が示す裁判の考え方から、今後の司法保護は以下の方向で深化していくと見込まれます。
第一に、権利基礎の立証ルールを一層整備し、技術的細部を理由に権利者が立証困難に陥る状況を防ぎ、「初步的証拠→反論証拠→高度蓋然性」の段階的立証基準を定着させること。
第二に、隠蔽化・連鎖化した侵害行為の識別と制裁を強化し、懲罰的賠償制度の抑止効果を十分に発揮させること。
第三に、技術事実解明メカニズムの多角化・専門化を推進し、複雑技術系案例の審理質と効率を高めること。
最高人民法院は本件において、立証責任・侵害認定・賠償算定など核心論点を精緻に裁判することで、ソフトウェア著作権者の適法な権益を守るとともに、同種案例に明確な裁判指針を与えました。
イノベーション企業にとって、本判決は権利救済の強力な支えとなるだけでなく、ソフトウェア開発プロセスのコンプライアンス管理と証拠留存の重要性を改めて喚起する示唆がふくまれています。