鋳成弁護士、某食品会社の営業秘密侵害訴訟を代理し、正式な口頭弁論前に原告が全請求を取り下げ

CHANG TSI
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くがつ18
2026

はじめに

営業秘密をめぐる紛争において、被告側の勝利は多くの場合「請求をすべて棄却する」という一枚の判決によってもたらされます。第一審から第二審まで、長期にわたる攻防を経たうえでの結果です。しかし、それよりも徹底した勝ち方があります。相手方が口頭弁論の前に勝ち目の乏しさを見て取り、自ら退場するという結末です。

このほど鋳成法律事務所の付同傑弁護士チームは、某多国籍食品企業(以下「当所のクライアント」)を代理し、営業秘密侵害紛争に対応いたしました。答弁書の提出、証拠交換の完了、および証拠に対する意見陳述を経た段階で、原告は口頭弁論を前に、裁判所へ全請求の取下げを申し立てました。本件は長期にわたる審理を経ることなく、司法鑑定も一切行われず、当所のクライアントは何らの責任も負わず、対象となった主力製品の製造・販売にも一切の影響が生じませんでした。

一、案件概要

当所のクライアントは著名な食品企業であり、新製品の発売後、市場で高い支持を得ていました。原告はかつて当所のクライアントのOEM委託先であり、協業の初期に自社から当所のクライアントへ送付した自社製品の配合が営業秘密に当たると主張。当所のクライアントが新製品の開発において当該配合を不正に使用したとして、配合の使用差止めと損害賠償を請求しました。

原告の主張は、一見すると完結した証拠の連鎖を形成していました。協業初期に配合を送付、守秘条項を含む協業契約の締結、協業終了時に「配合の継続使用を禁ずる」旨の書面合意を別途締結、そして当所のクライアントの新製品の発売。時期、契約、製品が相互に連関する構成です。

消費財メーカーにとって、この種の訴訟の真の脅威は賠償額ではなく、「使用の差止め」という請求にあります。これが認められれば、販売中の主力製品の棚下げ、生産ラインの停止、サプライチェーンの再構築を意味するためです。

二、本件の難点

1. 客観的な接触の事実は回避できない。当所のクライアントは、原告との取引の過程で確かに配合に関する資料を受領しており、「接触」という表面的な事実は否定できません。したがって抗弁はそこで止まることができず、権利の基礎および営業秘密の三要件の次元で正面から対応する必要がありました。

2. 配合の対比には高い技術的ハードルがある。食品の配合は数十項目の原材料と配合比に及びます。秘密点をどう画定するか、何を基準に対比するか、司法鑑定を開始すべきか、そのいずれもが本件を年単位の技術的な消耗戦へ引き込みかねない論点でした。

三、代理の方針

原告が提出した訴状および証拠を精査したうえで、鋳成の付同傑弁護士チームは速やかに代理方針を策定し、当所のクライアントと緊密に連携して関連証拠を収集、多層的な防御線を構築しました。

第一の防御線:原告が主張する配合とは、そもそもどれなのか

配合の侵害を主張された場合、多くの抗弁は「被告の配合が原告のそれに似ているか」という次元へ直ちに入っていきます。鋳成チームはそこで戦うことを急がず、より根本的な問いを先に立てました。原告が権利を主張する配合は、どの版を基準とするのか、という問いです。

チームは、原告が訴訟で提出した秘密点の説明書を、原告自身が権利の媒体と認める資料(協業初期に送付した電子ファイル)、および原告が公然と販売する製品の法定表示と、一項目ずつ対比しました。その結果、三つの版は相互に一致しないことが判明しました。訴訟版の秘密点は媒体に記載された配合比と実質的に異なり、原告自身の製品の原材料表示とも一対一で対応しませんでした。原告が提出した三種の資料は、互いに矛盾していたのです。

最高人民法院の先例が確立した基準によれば、秘密点が訴訟において臨時に整理されたものであり、提訴前に固定された媒体を欠く場合、営業秘密の内容および帰属を証明することはできません。権利の基礎がひとたび揺らげば、連鎖的な効果が生じます。秘密点が固定されなければ、同一性の対比は基準を失い、司法鑑定も開始しようがありません。原告が頼りにできたはずの手続上の武器は、抜かれる前に無力化されました。

第二の防御線:一項目ずつ消し込み、説明責任を原告側へ転換する

鋳成チームは、今世紀初頭以降の先行特許文献、専門出版物および公開プラットフォーム上の資料を調査・固定し、秘密点を構成する各要素の公知性に関する逐項の対照表を作成しました。秘密点の各原材料および配合比を、具体的な公開情報源へ一つずつ対応させたものです。範囲を示す文献は当該パラメータが自由に選択し得る範囲にあることを示し、実施例を含む文献は秘密点の具体的な数値を直接に開示しており、多くのパラメータが公開資料と高度に一致していました。この段階で説明義務は原告側へ移ります。すなわち、原告の配合は公知の手法と具体的にどこが異なるのか。原告は最後までこれに答えることができませんでした。

第三の防御線:「対応関係」の基準により秘密管理措置の前提を崩す

鋳成チームは、最高人民法院の判例が確立した準則、すなわち秘密管理措置は具体的かつ特定的であり、営業秘密およびその媒体との間に対応関係を有しなければならないという準則を援用し、次の点を逐次論証しました。本件情報は、原告がパスワードも表示も付さない平文のファイルとして自ら対外的に送付したものであり、送付の時点で両者の間に守秘に関する合意は一切存在しなかったこと。事後に締結された契約は過去に遡及し得ず、包括的な条項が本件情報に対する特定の秘密管理措置に代わることもできないこと。社内の従業員規程は契約の相手方を拘束し得ないこと。

第四の防御線:相手方の提出した契約証拠を自陣の武器へ転化する

鋳成チームは数百ページに及ぶ契約書を逐条精読し、決定的な答えが原告自身の提出した全文の中に潜んでいることを突き止めました。知的財産条項には、原告が主張する「配合」の一部について、その知的財産権が排他的かつ永久的に当所のクライアントへ譲渡され、協業終了後も効力を維持する旨が明記されていたのです。守秘条項の定義および例外規定も、公開情報および独自開発情報を明確に除外していました。

これと並行して、鋳成チームは当所のクライアントの研究開発の全工程に関する記録について公証による保全を完了し、あわせて非公開での証拠調べ等の秘密保持措置を実施。訴訟の過程で当所のクライアント自身の配合および開発情報が二次的に漏えいすることのないよう、攻守両面で完結した体制を整えました。

四、結果と実務上の示唆

当方が答弁書、証拠および証拠に対する意見を提出した後、原告は裁判所に対し全請求の取下げを申し立てました。当所のクライアントは、最小限の時間的・事業的コストですべての目的を達成しています。販売中の製品は全期間を通じて通常どおり製造・販売され、賠償金の支払いも一切ありませんでした。本件には、同種の主張に直面する企業にとって三つの参考価値があります。

第一に、秘密点の固定はあらゆる対比に先行する。まず「原告が主張する配合とは、そもそもどれなのか」を問い、秘密点に提訴前の客観的な媒体があるか、各版の間で整合しているかを検証すべきです。権利の基礎が固定されていなければ、対比も鑑定も成り立ちません。これは被告側が最も見落としやすく、しかし最も鋭い一手です。

第二に、秘密管理措置は権利者自身の課題であり、事後に補うことはできない。秘密管理措置の有効性は、契約書が何ページあるかではなく、受領者が「これは秘密である」と識別できるか否かにかかっています。事後の契約、包括条項、社内規程は、いずれもこの検証に耐えません。中核情報を対外的に交付する前の暗号化、表示、および個別の秘密保持合意こそが営業秘密保護の起点であり、後から追加できる手続ではありません。

第三に、相手方の証拠の中に武器を探す。協業契約における知的財産の帰属、ライセンス、例外の各条項には、原告の主張と反対の答えが埋もれていることがしばしばあります。これは被告側にとってそうであると同時に、契約締結時の企業への示唆でもあります。丁寧に交渉された契約は、数年後の訴訟において勝敗を分ける一手となり得ます。

そして本件のより深い示唆は、事件の終わり方そのものにあります。最良の勝訴とは、相手方に口頭弁論の前に勝てないと悟らせることです。質の高い答弁と証拠意見は、単なる防御的な書面にとどまらず、相手方の合理的な撤退を促す交渉材料にもなります。

鋳成法律事務所は営業秘密の分野に長年注力し、技術秘密と営業情報、被告側の応訴と権利者側の権利行使、民事訴訟と刑事・民事の交錯事案にわたる多数の案件を代理してまいりました。秘密点の固定、公知性の調査、秘密管理措置の検証から契約条項の解析に至るまで成熟した方法論と実戦経験を蓄積しており、多国籍企業および国内の大手企業に対し、営業秘密の攻守、秘密管理体制の構築、サプライチェーンのコンプライアンスに関する全過程のリーガルサービスを提供しています。

 

付同傑
パートナー | 弁護士
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