CHANG TSI
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本件意匠は、意匠番号201630366880.4、名称「道路交通信号灯」の意匠であり、意匠権者は四川科某実業有限責任公司(以下「科某社」)、出願日は2016年8月4日、登録公告日は2017年3月15日です。
四川華某智能交通科技股份有限公司(以下「華某社」)は、2021年11月29日に無効審判請求を行い、本件意匠は「証拠1+証拠2の組合せ」および「証拠1+証拠5の組合せ」のいずれに対しても明らかな区別を有せず、2008年改正意匠法第23条第2項の規定に適合しないと主張しました。うち証拠5は公証書であり、その内容はWeChatモーメンツに投稿されたSolidWorksによる設計スケッチの画面キャプチャ3点です。
無効審判段階:国家知識産権局(CNIPA)は第56930号決定を下し、意匠権を維持しました。主たる理由は、証拠5の3点の画像相互間の関連性および製品の同一性を確定できず、また製品の外観全体を完全に示していないため、対比の基礎とすることができないというものでした。
第一審(北京知識産権法院):被訴決定を取り消し、CNIPAに対し審査決定のやり直しを命じました。第一審裁判所は、証拠5は本件意匠を評価するための対比の基礎とすることができ、本件意匠は証拠1の正面/背面の設計と証拠5の外周装飾縁との組合せに対して明らかな区別を有しないと判断しました。
第二審(最高人民法院):上訴を棄却し、第一審判決を維持しました。すなわち「証拠5は組合せによる評価に用いることができ、本件意匠は再審査を要する」との結論が維持されました。
第二審における争点は、証拠5を本件意匠の組合せ対比評価に用いることができるかという点に集約され、具体的には次の二つの層に分けられます。
(一)WeChatモーメンツの内容を出願日前に公開された既存設計と認定できるか
裁判所は、意匠法第23条第4項にいう「公衆に知られた」とは、その内容が実際に広く知られていることを要求するものではなく、不特定の者が知ろうと思えば知り得る状態にあれば足りると明示しました。閲覧に承認を要するモーメンツ等のネットワーク空間上の内容が既存設計を構成するかについては、投稿の仕組み、投稿者の状況、内容自体、モーメンツの主たる用途等の要素を総合的に考慮して判断すべきであり、無効審判請求人が当該モーメンツが主として商業目的で用いられていることを立証した場合には、その内容が不特定の公衆にとって取得可能な状態にあると一応推定することができ、意匠権者が内容が公開されていないこと、または守秘義務を負うことを反証しない限り、この推定は覆らないとされました。
本件では、当該モーメンツにおいて出願日の前後を通じて科某社に関する宣伝内容が継続的に投稿されており、アカウント所有者に公開宣伝の意図があったと推定でき、かつ当該アカウントは意匠権者と密接な関係を有していました。意匠権者は有効な反証を提出できなかったため、裁判所は証拠5の内容が既存設計を構成すると認定しました。
(二)証拠5に係る設計上の特徴を組合せ対比に用いることができるか
裁判所は、次の二つの重要な判断準則を示しました。
1. 複数の画像が同一の製品に係るものかの認定基準:記録上の証拠が示すすべての情報および当事者の立証能力を踏まえて総合的に判断すべきである。立証側が提出した複数の資料が相互に裏づけ合う場合(本件では3点の画像が同一のソフトウェア上で同一のプロジェクト名およびナビゲーション位置を表示していた)において、反論する能力を有する側がこれを覆すに足る反証を提出できないときは、人民法院は複数の画像が同一の製品に係るものと認定することができる。
2. 組合せ対比に製品外観全体の完全な公開が必要か:裁判所は「組合せに用いるには製品の外観全体が完全に公開されていなければならない」との見解を明確に否定し、次の基準を確立しました。すなわち、一般消費者が既に公開された内容に基づいて、当該設計上の特徴が対応する製品の類別および当該特徴が全体の設計において占める相対的な位置関係を確定できる限り、その設計上の特徴は組合せ対比に用いることができ、製品の外観全体を完全に再現できることは前提とされない、というものです。本件では、証拠5が信号灯の外観全体を完全に公開していなかったものの、画像自体およびモーメンツ上の他の信号灯に関する宣伝内容を通じて、一般消費者は当該設計上の特徴が属する製品およびその位置関係を十分に識別することができ、かつ当該特徴自体が相対的に独立した視覚的効果を有していたため、組合せに用いることができるとされました。
また裁判所は、無効審判請求人が訴訟段階で提出した証拠5の鮮明な画像は、無効手続において既に提出済みの公証書の写しの証明力を補強するものであり、新たな争点事実を持ち込むものではないため、第一審裁判所がこれを採用したことに不当はないとも判断しました。
1. ソーシャルメディア上の公開証拠が採用される要件の緩和。WeChatモーメンツ等のソーシャルプラットフォーム上の内容は、投稿者に商業宣伝の意図があり、当該案件の関係者と関連性があることを示せれば、閲覧に承認を要する場合であっても「公衆に知られた」既存設計と認定される可能性があります。企業としては、日常の事業活動においてモーメンツや公式アカウント等で公開した製品画像・宣伝内容が、後の意匠出願や無効手続において既存設計の証拠として用いられ得ることに留意し、あらかじめ秘密管理と新製品の公表タイミングの管理を徹底する必要があります。
2. 部分的な設計上の特徴や不完全な製品も組合せ対比の基礎となり得る。本件が確立した準則によれば、既存設計の特徴の組合せは「完全な製品の外観全体」を前提とせず、部品、部分的な設計、さらには設計スケッチのうち識別可能で相対的に独立した視覚的効果を有する一部の特徴であっても、意匠の明らかな区別を評価する材料として用いられ得ます。したがって無効審判請求人は、既存設計の調査において、部分画像、設計スケッチ、部品の展示資料といった不完全な製品資料にまで視野を広げるべきです。一方、意匠権者は答弁において「証拠が製品全体を示していない」と単純に主張するのではなく、製品の同一性を裏づける証拠が十分か、特徴の位置関係が識別可能かといった実質的な観点から答弁を構成すべきです。
3. 「明らかな区別」の判断は「一般消費者」の視点による全体観察と要部対比に立ち返るべきである。最高人民法院は、明らかな区別の有無を判断する核心は、一般消費者が既に公開された内容に基づき設計上の特徴およびその位置関係を確定できるかにあり、証拠の形式的な完全性を機械的に要求することにはないと改めて強調しました。この点は無効調査の戦略や侵害対比意見書の作成にも指針を与えるものであり、重点は、特徴自体の識別可能性、独立した視覚的効果、および全体の設計における相対的位置に置かれるべきであって、証拠が製品の全体像を示しているか否かに拘泥すべきではありません。
4. 証拠の補強に関する準則の適用範囲。本件は、訴訟段階で提出された、無効審判段階で既に採用された証拠の証明力を補強するための新証拠(同一の公証書の鮮明版など)を、裁判所が採用し得ることを確認しました。これは、当事者が無効手続において証拠の原本資料を可能な限り早期かつ完全に提出し、証拠が不鮮明であることにより後続手続での補強の際に争いが生じることを避けるべきことを示すとともに、訴訟段階における合理的な証拠の補強に制度的な根拠を与えるものです。